Xenogears 20th Anniversary Concert
-The Beginning and the End –
2018年4月7日、8日は僕にとって忘れられない日となりました。ゼノギアスのコンサートはずっと夢見ていましたが、実現するには数多くの問題をクリアしなければいけませんでした。もちろんオーケストラ団体にお声掛けをして、全ての曲をオーケストラアレンジをしていわゆるオーケストラコンサートとして開催すればそれほど難しいものではなかったのかもしれません。
(Joanne Hoggさんの問題はそれでもありましたが……)
ですが、僕は元々ゼノギアスにおいてオーケストラサウンドだけの音楽を作っていませんでしたし、このゲームのコンサートをするには幅の広い音楽表現が必要だと思っていました。また、音楽だけでなく会場を一体とした演出もすべきだと感じていました。妥協して20周年コンサートをやるのは自分としても嫌でしたし、大切なコンテンツを適当に扱うのは許されないという思いでした。また、自分の構想と違うものを開催しても自分自身のテンションが上がらないだろうなと……。もしそうなら僕が総合監督をやる必要もないかなと……。
しかし、奇跡的にも(マイケル曰く必然……:ファミ通さんの記事を是非)Xenoblade2の開発時期にANÚNAのリーダーMichaelと出会い、意気投合しXenogeasのコンサートについても相談をしました。ANÚNAが参加することにより一つの光が見えるからです。(この時は全体の予算など考えてもいませんでしたが……笑)マイケルは前向きに考えてくれて、コンサートの開催が決まったら連絡をして欲しいと言ってくれました。同時期にジョー(Joannne Hogg)からも4月なら出演出来るかもしれないという返信をいただき、一筋の光から、希望の光と大きく変化しました。会場もアンフィシアター1択で絞っていたので、コンサートが開催出来る日程を探ってもらい4月の最初の週が取れた(仮抑え)と連絡をもらい、正式にジョーとマイケルに出演オファーをしました。両者も日程的に問題無い事になり、いよいよゼノギアスコンサートが現実味を帯びてきたのでした。この時2017年の5月〜6月頃のお話です。
しかし、ここからなかなか前へ進む事が出来なくなります。それは、アンフィシアターの客席の数、そして収支です。通常コンサートは集客率を80%〜85%で考えます。(多分、これでもかなり高い方です)しかし、僕の構想を100%叶えるならこのコンサートにおいては94%〜98%という恐ろしい数字をたたき出していたからです。要するに4公演(8000人)すべての座席が完売する必要があったわけです。ゼノギアスといえど、20年前のコンテンツで8000人もお客さんが来てくれるのか?ここは大きな壁となってしまいました。僕も削れる所は極力削るようにしたのですが、全体的にチープになっても意味がないのでどうしても限界はありました。8月の時点でもなかなかGOが出ない為、流石にこれ以上は準備期間を考えても限界だなと思い「もうやらないでいいですよね」と担当者にメールを打ち違うお仕事を進める準備をしようと思っていました。メールを打って数日、担当者から「正直、凄く厳しいです」(心の中でやっぱりダメだったか〜と)「でも、腹をくくりました。やりましょう!」という連絡をいただき開催の決定が決まりました。結局、フタを開けてみたらチケットは予想を遥かに超える数の応募がありコンサートも無事に開催することが出来ました。ファンの皆様には本当にありがとうございましたと言いたいです。
しかしこの時、僕の中では色々な気持ちがありました。(正直、複雑な思いでした)
○ やった〜〜〜夢にまでみたゼノギアスのコンサートが出来る!
○ 時間がなさすぎる……何処まで自分の構想が実現出来るんだろうか?
○ 死に物狂いでやらないと大失敗してしまう!
という思いでした。それからというものコンサート当日までずっとゼノギアスのことで頭が一杯でした。どうしたらお客さんに楽しんでもらえるか、どんな曲がみんな聞きたいのか、演出はどうしよう、ミュージシャンは誰がいい、セットリストはどうしよう……などなど。とにかく一つずつ頭の中にあるイメージを言葉と画像で資料をつくり少しでもスタッフの方に理解してもらう為、企画書を作り込んだり、ありとあらゆる人脈をつかって自分が思い描いている世界観に近づけようとしていました。そん中、スクウェア・エニックスさんよりXenogears Original Soundtrack Revival Discの制作の話しもあり「いやいやムリムリ」と半泣き状態でした(笑)。
と、ここ半年間はかなり大変だったのは間違いないですし、正直、途中でもうコンサートはやりたくないなーと(苦笑)何度も思ってしまいました。そんな日々を過ごしていたらあっという間に数ヶ月が過ぎ、気がつけば本番まで1週間を切っていました。この時点でまだアレンジしていたり、気に入らないところを修正をしていたり、演出面で急遽曲を入れた方がいいといった話しがあったりとバタバタでした。ちなみに、M09のSMALL TWO OF PIECES Piano Versionは急遽アレンジをして本番に組み込みました。
今回、パンフレットに書かれているセットリスト(曲数、曲順)がかなり本番と変わってしまったのは最後の最後まで演出に拘っていたからにほかなりません。それから、今回とにかく1曲でも多く音楽をお届けしたいということで、MCを極力省くということにしました。司会者を入れるという話しもありましたが、司会者は時に音楽の世界観を壊してしまう場合があります。もちろん、楽しいコンサートにするには司会者がいた方が絶対いいと思いますが、今回は“20年の時を経て、再びあの頃の記憶が蘇る”というテーマだった為、ゼノギアスの世界になるべく没頭していただきたいという思いがありました。なので司会者は入れないでくださいというお願いをしました。通常のコンサートは音楽だけでだいたい1時間30分から40分ぐらいのセットリストにし、トークや転換をいれて2時間15分〜30分にするのが通例ではありますが、ゼノギアスコンサートに限っては音楽だけで2時間4分~5分もありました。どれほど音楽を詰め込んだかというのがおわかりになるかと思います。それでももっと演奏したかった曲もあります。例えば「黒月の森」であったり「アヴェ いにしえの舞」(これなんかは今回のメンバーで演奏できました)であったり「熱砂の街ダジル」などは入れたかったですね。欲を言えばキリがありませんが……。
そして、今回は僕の作曲家20週年記念コンサートの時にもお願いした照明の佐藤さんに再びオファーをさせていただきました。僕のコンサートには必要不可欠な方です。とにかく作品や音楽がもつメッセージを光の演出で的確に表現してくれます。そして最後の最後まで良くしようと頑張ってくれる最高の照明さんです。7日の初日と8日の千秋楽では全然光の使い方違います。どちらも素敵なのですが、細かな修正をどんどん入れていきます。ちなみに、せっかくなので僕が佐藤さんにお願いした際の指示表の画像をアップしておきまししょう。
【ライティング指示表(この一個前のVerが佐藤さんに渡っています)】
そして、そんな僕のやりたい事を的確に各所に指示をしてくれた舞台監督のゆーむらさん(女性の方)が本当に素晴らしい仕事をしてくださいました。実はトラブルが多発した今回のコンサートにおいてそのトラブルを一つ一つクリアしていくさまは圧巻でした。あ〜プロフェッショナルだなーとずっと関心していましたし、ゆーむらさんがいてくれたからこそ僕は安心して舞台に臨めたと思います。そして、このゼノギアスのことを凄く研究してくださり、舞台上の演出についてもアイディアを沢山いただきました。いや、僕よりゼノギアスのことわかってるんじゃーないのと思える程でした。本当に立役者といってもいいと思います。ぶっちゃけ彼女がいなければここまで上手くいかなかったかもしれません。本当にありがとうございます。次のコンサートがあった場合、確実にゆーむらさんに舞台監督をやってもらいたいですね。
上記にも書きましたが、実は今回のコンサートではかなりトラブルが発生いたしました。(前日にTwitterでトラブルさえも楽しみたいとツイートしたのも、そういったことを予言していたのかも知れません、笑)まずはジョアンヌの飛行機がキャンセルになって来日が一日遅れてしまったこと。7日の本番前のリハーサルで僕のブズーキのピックアップが壊れ音が出なくなってしまった事。予期しないノイズが時々出てしまうという問題。どれもヒヤヒヤもののトラブルでした。特にピックアップが壊れた時は「終った」と思いました。実は7日の公演で前に出られなかったのはそういった問題があったからなんです。
ともあれ、全ての舞台スタッフさんが最高の仕事をしてくださったお陰で素晴らしいコンサートに仕上がりました。改めて心より御礼申し上げます。
全然書き切れないので続きは明日……Part2でも書きます。