まだまだお伝えしきれていない部分がありましたので、今日は演出のお話を少ししたいと思います。まず、会場へ入ってからの雰囲気についてですが、一番最初にお願いしたのがチケットを切ってもらった瞬間から「エルドリッジ」に乗り込む雰囲気を演出出来ないか?という事でした。各入り口はSFチックな扉にしたり、壁一面ブラックライトを使ったり、機械的な壁にしてドックのような見栄えにしていよいよ宇宙船に乗り込むぞ!という雰囲気が出せれば最高だなと思っていました。そして会場に入ったら宇宙空間になっていて、音楽が演奏される前からゼノギアスの世界に入っていただきたいという思いがありました。しかし、これには大道具が必要になり、莫大な予算が掛ってしまうということで残念ながら実現することが出来ませんでした。しかし、田中久仁彦氏が原画を貸してくれるという涙が出るほど嬉しいご提案をしてくださり(しかも写真撮影OKという……本当に田中さんありがとうございました)、急遽原画展という形にして、ゼノギアスの世界を楽しんでもらおうということになったわけです。急遽決まったこともあり会場のレギュレーションが間に合わず、皆さんにはかなりご迷惑をお掛けしたのではないかと思います。個人的にもっとじっくりと原画が見てみたいので田中久仁彦展を開催すべきだと思っています。(ということでスクエニさんよろしくお願いします!)そして、この日の為にわざわざ色紙にキャラクターを描いてくださいました。本当に本当にありがとうございました。
ここからは演出とアレンジの方向性などピックアップして少し書いてみたいと思います。
1.冥き黎明
最初は映像を使うつもりではありませんでしたが、オープニングはスクウェアでも珍しいアニメーションということできっとファンの皆さんの中でもかなりインパクトがあったのではないかと思います。そこで、舞台監督のゆーむらさんから映像を使うのはどうですか?と聞かれたので、しっかりとお客さんに見せられるのであれはやりたいですね。とお答えしました。というのもゼノギアスは昔のゲームなので映像の解像度は低く大画面だとかなり粗く写ってしまいぼやけてしまうからです。しかしそこは映像チームが綺麗に鮮明に映るよう工夫をしてくださいまして実現することになりました。最初にしてクライマックス!!アレンジも原曲の雰囲気を崩さずバンドサウンドを入れ更に激しい感じになっています。この曲はとにかく照明がめちゃくちゃカッコいいです。”You Shall Be As Gods”と出る所は会場一杯に文字を映し出してもらう予定でしたがスクリーンが張れず断念。そのかわり真っ赤なライティングでカバーしていただきました。
2.海と炎と絆
原曲に近いアレンジをしながらも、後半は少しコード進行を変えて「人の醜い争い」「悲しさ」なども表現してみました。これぞ20年経った時にしか出来ないアレンジですね。
4.風のうまれる谷〜遠い約束
風のうまれる谷はほぼ原曲の雰囲気を崩さずアレンジしてあります。ちなみにこの曲は弊社のマリアムが編曲しました。そして遠い約束はオリジナルではオルゴールですが、コンサートではピアノにしました。それは一番最後の演出とかぶってしまう為です。遠い約束の出だしのピアノの音が音域的に少し低いかなと思いますが20年分の重みということにしておきましょう(笑)。最後、ミラーボールの光がどんどん増えていくのは本当に美しかったですね。
7.グラーフ闇の覇者〜導火線
イントロのパッドの音はオリジナル音源と同じ音色を使っています。グラーフはこのシンセの音を聞くと「キター!!」という感じがするので、音色は変えませんでした。導火線はゲームでは音数が出せない為、疾走感しかありませんが、生は疾走感+躍動感+緊張感が良い形で合わさった感じになったと思います。こういう曲は生演奏に限りますね。
10.盗めない宝石
この曲はアレンジする際に絶対歌ものにして、エリーとフェイのデュエットにしようと思っていました。アヌーナの皆さんがそこをしっかり汲み取ってくれて素晴らしい演出になったかと思います。シンプルに聞こえるこの楽曲ですが、部分転調が沢山あるため、ケルティックハープの梅ちゃんはレバー操作が相当大変だったとおもいます。
11.傷をもてるわれら 光のなかを進まん
完全なる教会音楽でそれを見事にライティングで演出出来たと思います。予算があれば大道具で天使を両サイドに飛ばしたかったのですが、難しく出来ませんでした。しかしニサンの教会だと分かるようにしたかったので十字架を投写することにしました。とても素晴らしい光の演出だったと思います。
14.悔恨と安らぎの檻にて
この曲はコンサートパンフレットにも書きましたが、ビリー・リー・ブラックのテーマとして書いた曲です。歌詞もそのイメージで書かれています。演出として客席からロウソクをもって歌いながらステージに上がってくるというのをやりたかったのです。ロウソクの光はビーリーのトラウマや魂としての表現であり、それがステージ(檻)に集まり雁字搦めになっていく、それをビリー本人が自ら解放していく(檻から出ていく)という演出にしたかったわけです。ただ、客席からステージに移動するだけでかなりの時間がかかり、結局、檻に閉じこめられるシーンまでの表現となりました。あと、この曲リバイバルディスクと若干アレンジが変わっています。その理由が分かる人はなかなかのゼノフリークですね。
15.紅蓮の騎士
どうしても途中で喋る「ヴォイス」を入れたくてPSのデータをくまなく探しました。なかなかみつからずPlayStationのデータから復活させました。
16.神無月の人魚
エメラダのテーマとして書いたこの楽曲はステージ上を綺麗なエメラルドにしたく照明さんにお願いしました。それだけでエメラダのテーマだと感じ取っていただけたのではないでしょうか?
18.飛翔〜翼
このコンサートの第2部でもっとも盛り上がる所かもしれません。翼は僕のまわりの人がどうしても聞きたいというので、じゃーメドレーにしようということになりました。映像もさることながら最高のシーンの一つになったのではないでしょうか?
20.覚醒〜神に牙むくもの
神に牙むくものはどうしてもあの幽霊みたいな顔をスクリーンに出してゆらゆらと揺らしたくて映像チームに無理言ってやっていただきました。それに合わせてミニマムミュージック的なサウンドが独特な雰囲気を醸し出していましたね。
21.最先と最後
最初は映像を使いましたが、最後の方はステージ演出に移りかわっていきます。ステージ上の円が沈み「冥き黎明」のラストと同じ演出になっていますが「冥き黎明」とは違い希望としてジョアンヌがしたから上がってきます。ここはオープニングとの対比になっており、これから進むであろう未来をしっかりと表現しています。ちなみに、ジョアンヌが少し歌詞を変えて歌っていたのは気付いていましたか? ま〜公演日によってコロコロ変わっていましたが(笑)、20年生きてきて感じたジョアンヌの気持ちだったのではないでしょうか?
25.遠い約束
最後は絶対にこれで終りたいと最初から決めていました。その為だけに特別にオルゴールを作っていただきました。世界に2個しかありません。実は1個本番で壊れても大丈夫なように2個作ってくださったのです。(僕は緊張しいですから落としてしまうかも知れませんし、笑)このオルゴールいま絶賛スクエニさんに「1個くださいよぉ〜〜」と言っているのですがくれません……。おかしいなー。
結局なんやかんやで20曲程度だった楽曲が最終的に25曲(しかもメドレーもあるのでもっと多い)という大コンサートとなったわけです。自分的にはやれるだけのことはやりましたが、終ってみればまだまだやりたかった事もあります。終ってしまって今は抜け殻となっていますが、また違った形で皆さんとお会い出来る日を楽しみにしています。
最後に2つほど。
パンフレットに記載されていたミュージシャンでヴァイオリンの申 愛聖さんのお名前が間違っていました。申さま大変失礼いたしました。
最後に沢山の方からお花、贈りもの、お手紙をいただきました。わざわざ贈っていただいた皆様にお礼申し上げます。お手紙は少しずつ読ませていただいており、また良いものを作らねば……!とパワーをいただきました。本当にありがとうございます。最後になりますがこのコンサートに関わってくださった多くのスタッフの皆様に改めてお礼を申し上げます。誰一人掛けても成功はあり得なかったわけで本当にこのコンサートは皆さんのお力あってのものだと思います。また、何年先になるか分かりませんが、ご一緒できる日を楽しみにしています。